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こんにちのぶんがくのちょうかんず
今日の文学の鳥瞰図
宮本 百合子
「唯物論研究」1937(昭和12)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,298 字 · 24 页
これらの作家を、栖鳳の貰った文化勲章に価しない芸術家であると言うことの方が寧ろ困難である。作家には文化勲章が与えられず、日本歴史の研究その他で知られている徳富蘇峰氏等の名が候補者として噂にのぼっているのはどう言う訳であろうか。
ここに文学そのものの、特に小説というものの本質の問題が横わっていると思われるのである。文学の創作が現実を反映すると言うこと、作家の人間的な全面がおのずからそこに露出しているということ、しかも芸術家である人々は、それぞれの時代や自身の制約の中にありながらも比較的常に敏感に自分と周囲との人間生活を観察しているので、小説は傑出したものであればあるほど謂わば人間臭さが強い。栖鳳が人間臭い生活はそれとしてやって、画布に向った時は一種の芸術的境地とも言うべき雰囲気の中に入って花だの蛙だの鹿だのというものを画いてゆくのと、例えば藤村、秋声の作品とは大いに違ったところがある。日本画家が今日尚住んでいることの出来る風韻の世界を、日本文学は既に四五十年以前失っているのである。
文学作品が現実を語るという本質から、今日、日本の文化勲章が簡単に作家に与えられないという事情は、文学の側から言えば名誉であろうとも、不名誉であることは決してないのである。