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こんにちのぶんがくのちょうかんず
今日の文学の鳥瞰図
宮本 百合子
「唯物論研究」1937(昭和12)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,298 字 · 24 页
よしんば一作家がそれに充分の芸術的力量を持ち、素材も持ち、歴史の見通しを持っているとして尚その可能を疑わせる特別な事情が今日の日本に支配している。単純に個々の作家の才能の力で解決し突破することの出来ない柵がある。客観小説を提唱する人々が今日作品の実際では申合せたように歴史小説の分野に紛れ込んだり、通俗的な大衆文学、通俗文学に入って行っていることも、複雑な観察を求める現象である。
多くの作家によって今日大衆は自身の文学を作る可能を持った者としてその面での有機的関係で見られておらず、或る意味ではプロレタリア文学の運動が起らなかった以前のままの内容で作家は大衆を取上げているのである。このことはどうして起って来たのであろうか。五六年の歳月を過去に遡って、簡単に経過を眺めたいと思う。
一九三二年以来日本では内外の事情によってプロレタリア文学が運動としての形態と機能とを失ったことは既に知られている通りである。左翼の運動は日本の資本主義社会の特殊な人工培養性に従って全く独得な歴史を持つものであるが、プロレタリア文学運動の消長もこの全体的な特徴に影響を受けている。