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こんにちのにほんのぶんかもんだい

今日の日本の文化問題

宮本 百合子

「思想と科学」臨時増刊号、1949(昭和24)年1月発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,154 字 · 161 页

青空文庫

一九四七年八月には夏目漱石の遺族が漱石の全著作に対する商標権の登録申請を行って出版のみならず文化分野全体にショックを与えた。著者の死後二五年で遺族の版権所有が消滅するので夏目家は彼等をこれまで養ってきたその権利を新しい形で確保しつづけようとした。これらを機会として国会文化委員会では出版文化に関する小委員会を設け著作権法および出版権法の審議をはじめた。

翻訳権 日本政府は戦時中情報局、外務省その他の役所が先頭に立ってナチズム、ファシズム宣伝のために国際的な翻訳権の協定を無視した翻訳出版を行った。同時に民間にも正式手続を経ない翻訳の悪風があった。音楽に関する翻訳権問題は数年前の「プラーゲ旋風」の時に一応の国際基準がたてられた筈であった。一九四六年、日米間にあった翻訳自由の条約無効が言い渡されてから、まだ日本は各国との間に翻訳権の原則的とりきめが行われていない。現在は著作権が既に消滅している著者のもの、および原著者から翻訳発行の許可があってGHQの民間情報教育局がそれを承認したものに限られている。この事情はたださえ長年の封鎖状態におかれた日本の文化と民主化のために重大な遺憾事である。