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こんにちのせいめい

今日の生命

宮本 百合子

「文学時標」第四号、1946(昭和21)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,421 字 · 3 页

青空文庫

小ざかしげなその種の文章が新聞にいくつも載った。

執筆した人々は、今日生存しつづけている。どんな慙愧の念をもって、昨年十月初旬、治維法の撤廃された事実を見、初めて公表された日本支配権力の兇暴に面をうたれたことだろう。

民主的な社会生活の根本には、人権の尊重という基底が横わっている。人権尊重ということは、正当な思想を抑圧して小林多喜二のような卓抜な一個の社会人・作家を撲殺するようなことが決して在ってはならないという通念を意味する。同時に、それを主体的に云えば、一個の社会人・芸術家は、自分の理性がさし示す歴史の前進の方向、情熱がさし示す純潔なる芸術生活への献身を、ひるむことなくわが身をもって実現する当然の自由をもっているのだということを自覚すべき責任があることをも示している。人間一個の価値を、最大に、最高に、最も多彩に美しく歴史のうちに発揮せよ。小林多喜二の文学者としての生涯は、日本の最悪の条件のなかにあって猶且つ、そのように生き貫いた典型の一つである。〔一九四六年三月〕