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けさのゆき
今朝の雪
宮本 百合子
「婦人朝日」1941(昭和16)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,936 字 · 24 页
すこし慾ばりすぎるかな、と簡単なその言葉に、正二は、生死の保しがたい自身を考えていたのだった。峯子は峯子の心の真実に従って自由に進退の出来るよう。更に、この頃生活への理解が急迅に成熟して来た峯子は、正二が自分たちに置いた抑制の意味を、正二のほんとうに男らしい、寧ろ良人らしい深い思いやりからとして考えるようになった。
峯子のひとりの生活をしのぎ得るものとしているのは、開花した花びらが風に誘われるもろさを知らず、未熟かも知れないが、おのずからの堅固さで希望をもって暮らせているのは、何故だろう。
御褒美と云った正二の表現は、あたっている。最も厳粛な意味であたっている。
自分たちばかりでなく、今日の日本に生きる幾多の若い男と女との、真面目な心にもあてはまることかもしれない。
省線の駅から燈火管制で暗い大通りへ出た峯子は、住居へ曲る角をすこしゆきすぎて、もう店先へ水を流している魚やへ一人前の配給をもらいによった。