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ぶっぽうそうちょう

仏法僧鳥

斎藤 茂吉

「時事新報」1928(昭和3)年1月4日、5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,351 字 · 11 页

青空文庫

しばらく景色を見ていた皆は、高野山の好い山であるということに直ぐ気がついた。徒歩の二人はもう元気づいて、駕籠の立つのを待たずにのぼって行った。

併し、女人堂を過ぎて平地になった時には、そこに平凡な田舎村が現出せられた。駕籠のおろされた宿坊は、避暑地の下宿屋のようであった。

小売店で、高野山一覧を買い、直接に鯖を焼くにおいを嗅ぎながら、裏通りにまわって、山下という小料理店にも這入って見た。お雪という女中さんが先ず来て、それから入りかわり立ちかわり愛想をいいに女中さんが来た。

『院化はんも時たま来なはります』

こういう言葉をそこそこにO先生をはじめ山下を出た。私等はこの日霊宝館を訪ねる予定であったが、まだ雨が止まぬので此処に一休するつもりで来て、雨の霽れるのを待たずに此処を出たのである。併し女中さんが二人で私等を霊宝館まで送って来た。霊宝館の廊下から振返ると、二人の女中さんは前の小売店の所で何か話込んでいるのが見えた。霊宝館では、絵だの木像だのいろいろの物を観たが絵には模写もあり本物もあった。薄暗いところで仏像などを観ていると眠くて眠くて堪らないこともあった。