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イタリアのことう
伊太利亜の古陶
宮本 百合子
「中央公論」1924(大正13)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,477 字 · 31 页
なものではありませんか」
「そうではないよ。ものには程度がある。自分が当然と思わない好意を平気で受けるようになっては男もおしまいだ」
「どうしてそうお思いなさるんでしょうね」
みや子は、困じはてたような声を出した。
「あなたの忙しい体でわざわざ伊勢迄出かけて今度のことは纏めてあげたのじゃありませんか。晨子様のことでは皆それはそれは気に病んでいらしったのですもの」
「もうおやめ、そんなに欲しければ沼津に何処か見つけて買ってやる。貰う話だけはやめてくれ、俺は嫌いなんだから。……」
日下部太郎は、家の門が見える位の処へ来た時、念を押し、みや子が、
「本当にお願いですから、高畠さんから何かお話があったら即答なさらないで下さいね。あなたは私が遊びに行きたがっているとでも思っていらっしゃるのでしょう。……母親は息子達の将来をいつも考えているものなのですよ」
と涙を含んだような声で云ったのをも黙殺した。
玄関に降ると、彼は書生に、すぐ書斎の煖炉に火をつけることを命じた。
彼は手早く着換えをし、高畠子爵のそれほど広大ではないが、小ぢんまりと充分居心地よい書斎の机に、大部の書籍を数冊とり出した。