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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
岡本綺堂『伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:平家蟹、青蛙神、人狼、五色蟹、木曽の怪物、蟹満寺縁起、怪談劇、小坂部姫、小坂部伝説、江戸の化物。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,094 字 · 411 页
与五郎はその松明を打消して、おなじく縁にあがり、両人座を占める。)
与五郎 姉御はいずかたへ参られたであろうな。
玉琴 さあ、近所へ物買いにゆかれたか。但しは奥に……。(起って奥をうかがう。)奥も暗がりでよくは見えぬ。もし、姉様……姉上様……。
玉虫 そういうは誰じゃ。わらわはこれに居りまする。
(玉虫は小袿をぬぎ、白小袖、緋の袴にて、奥よりいず。)
玉琴 おお、姉様……。それにおいでなされましたか。
玉虫 又しても姉という。そなたとは、すでに縁切っているのじゃ。
(云いつつ悠然と座に直る。与五郎は一と膝すすめて会釈す。)
与五郎 姉上には初めて御意得申す。それがしは下野の国の住人、那須与市宗隆の弟、同苗与五郎宗春。
玉虫 その与五郎どのが何用あってここへはまいられた。
与五郎 妹御を所望にまいった。仔細はおおかた御存じでござろう。平家没落の後は、ゆかりの人々も寄辺をうしない、それの姫君、なにがしの女房と呼ばるる、やんごと無き上※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)達もおちぶれて、たよりなきままに恥を忍び、浮川竹の憂きに沈めて、傾城遊女の群れにも入りたもう。