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へいけがに

伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集

岡本 綺堂

岡本綺堂『伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:平家蟹、青蛙神、人狼、五色蟹、木曽の怪物、蟹満寺縁起、怪談劇、小坂部姫、小坂部伝説、江戸の化物。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,094 字 · 411 页

青空文庫

隠しても知っている。して、奥方の返しは何とあった。」

何から何まで知っているらしいので、侍従は少し慌てた。かれはうす明かるい月の光りに相手の顔を覗きながら訊き返した。

「そのようなことを誰に聞かれました。」

「誰に……。」と、権右衛門は少し言い淀んだが、やがて思い切ったように答えた。「おお、聞いたよ。殿から聞いたよ。」

「あ、殿が……。まことに其のようなことを洩らされましたか。」

狡いようでも浅はかな女房は、どうやら彼の掛け罠にかかったらしい。もうこっちのものだと言わないばかりに、権右衛門は頤の髭をかえして又言った。

「就いては、その返しは何とあったか。心得のために訊いて置きたい。何もかも真っ直ぐに言うておくりゃれ。」

しかし相手はまだ半信半疑であるらしく、そう安々とは彼に釣り出されそうもないので、権右衛門はまた思案を変えた。彼はすり寄って嚇すようにささやいた。

「ありようは権右衛門、きょうの午すぎに若殿のお館へ伺候すると、大殿と塩冶の奥方との一条、誰の口から洩れたか知らぬが、もう若殿の耳にも聞こえて、さりとは怪しからぬ儀じゃと、かの殿にも胸を痛めておられた。