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えせものがたり
似而非物語
山本 周五郎
「週刊朝日涼風読物号」朝日新聞出版、1952(昭和27)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,817 字 · 64 页
杢助は横になっていた。半ば傾いた家の縁側に蓆を敷いて、その上に木枕を置いて、さも気楽そうに横になっていた。そしてきせるでうまそうに煙草をふかしていた。それは弥市にとっては驚異であった。「煙草」というものがあることは知っていたし、それがどこか天竺のほうから渡来したという話も聞いていた。けれども現実に見るのは初めてであった。杢助は帰って来て五日になるが、いつもきせるを持って、悠々と、うまそうに煙草をふかしていた。それはいかにも高尚で、貴族的で、近より難く、あたりを払うようにみえた。
「そうよ、起こったっけよ」
杢助は放心したような声で云った。
「大坂方のなんとかいう大将が首をぶたれたときによ」
「大坂方の大将がどうしただって」
「京の河原で首をぶたれただよ」
杢助はきせるをはたいた。
「しゃっと、いやな音がして、それから首のぶっ飛んだあとから、まっ赤なあれが一丈も噴きあがっただ、びゅうっとよ、一丈の余もあったっけか、ほんとによ、そのときおらくる眼を起こしただあ」
「するとおめえはいくさにんになっただかえ」
「おらがいくさにんになったかって」
杢助は鼻を鳴らした。