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えせものがたり

似而非物語

山本 周五郎

「週刊朝日涼風読物号」朝日新聞出版、1952(昭和27)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,817 字 · 64 页

青空文庫

飯篠老人は話しを進めた。

「まことの長威斎は杢助その人である、わしは門人であって、先生の草庵をいとなむため、先に杉谷へ来ていたのである、なにを隠そう杢助こそ山城守直家……なにを笑うか、村の山猿どもを云いくるめるくらいの弁舌がこのわしにないとでも思うのか」

「おら笑やしねえだ、笑いたくもねえだよ」

杢助はきせるを取った。

「それに、おまえさんがそこまでお膳立てをしてくれるつうなら、ためしにやってみてもいいと思うだ、そう思うだが、間違っても災難ごとなんぞ起こりやしねえだべえな」

「そんなことはない、そんなことはある道理がない」

飯篠老人は言葉を強めて否定した。老人はこの磊落なたくらみと、その結果として生ずるであろう悲喜劇の予想とで、すっかりのぼせていた。のぼせあがっているようであった。杢助はどちらでもよかった、杢助には少しも成心はなかった、杢助はただ怠けていることができれば文句はないのであった。

杢助は杉谷の草庵へ移った。

飯篠老人は身代りとしての二三の心構えを教えた。

修業者たちに対して「なるべく口をきかない」こと、かれらの奉仕を「決して遠慮や辞退しない」