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えせものがたり
似而非物語
山本 周五郎
「週刊朝日涼風読物号」朝日新聞出版、1952(昭和27)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,817 字 · 64 页
「先生にお願いがございます」
二之木が云った。
「きいて頂けますでしょうか」
「――なんだや」
「あの娘たちの来るのを禁じて戴きたいのです」
「――どうしてだや」
「御存じの如くわれわれは専心不乱、剣道の奥義を会得するために念々修業しております、しかるにあの娘たちは淫卑猥雑、けがらわしき言動を以てわれわれを悩まし、神聖なる草庵を汚涜いたします、かようなありさまでは修業の妨げになりまするし、元来かかる道場へ女どもを近よせることが如何かと存じます、どうか今後は固く出入りを禁じて戴きたいのです」
杢助は二之木を見、それから他の四人を順に見た。きせるに煙草を詰め、燧袋を取って、ゆっくりと煙草をふかした。
「おめえにきくだが」
と杢助が云った。
「いってえ卵ちゅうもんはなにが産むだね」
「それは申すまでもなく」
二之木がむっとして答えた。
「むろん牝鶏が生みます」
「じゃあおめえはどうだ、うう、おめえはなにから生れて来ただえ、木の股かえ」
「もちろん母親からでございます」
杢助は煙草をふかし、ふんと云った。
「――そのおふくろさまは、女かえ男かえ」
「むろん女でございます」
「それでその、おふくろさまもやっぱり、おめえにはけがらわしいだか」