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さど
佐渡
「公論」1941(昭和16)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,270 字 · 23 页
同じ歩調で、すまして行き過ぎようとしているのだ。島の岬の燈台は、みるみる遠く離れて行く。船は平気で進む。島の陰に廻るのかと思って少し安心していたのだが、そうでもないらしい。島は、置きざりにされようとしている。これは、佐渡ヶ島でないのかも知れぬ。小鴨は、大いに狼狽した。きのう新潟の海岸から、望見したのも、この島だ。
「あれが、佐渡だね。」
「そうです。」高等学校の生徒は、答えた。
「灯が見えるかね。佐渡は寝たかよ灯が見えぬというのは、起きていたら灯が見えるという反語なのだから、灯が見える筈だね。」つまらぬ理窟を言った。
「見えません。」
「そうかね。それじゃ、あの唄は嘘だね。」
生徒たちは笑った。その島だ。間違い無い。たしかに、この島であったのだが、けれどもいま汽船は、ここを素知らぬ振りして通り過ぎようとしている。全く黙殺している。これは佐渡ヶ島でないのかも知れぬ。時間から言っても、これが佐渡だとすると、余りにも到着が早すぎる。佐渡では無いのだ。私は恥ずかしさに、てんてこ舞いした。きのう新潟の砂丘で、私がひどくもったい振り、あれが佐渡だね、と早合点の指さしをして、生徒たちは、それがとんでも無い間違いだと知っていながら私が余りにも荘重な口調で盲断しているので、それを嘲笑して否定するのが気の毒になり、そうですと答えてその