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なにもの
何者
江戸川 乱歩
「時事新報 夕刊」時事新報社、1929(昭和4)年11月28日~12月29日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,449 字 · 77 页
病院へ附添って行って、その場に居合わせなかった夫人と志摩子さんは、翌日取調べを受けたが、その時の志摩子さんの返事が、少し変っていたのをあとで伝聞したので、序にここに記して置く。
警部の「どんな些細なことでも」という例の調子に誘われて、彼女は次の様なことを申述べた。
「私の思違いかも知れませんけれど、私の書斎へも誰か這入った者があるらしいのでございます」図面に記した通り、彼女の書斎は問題の少将の書斎の隣室である。「別になくなったものはございませんが、私の机の抽斗を誰かあけたものがあるのです。昨日の夕方確にそこへ入れて置いた私の日記帳が、今朝見ますと机の上に拡げたまま乱暴に投り出してありました。抽斗も開いたままなんです。家の人は、女中でも誰でも、私の抽斗なんか開ける様なものはございませんのに、何だか変だと存じましたので。……でもつまらないことですわ」
警部はこの志摩子さんの話を、其まま聞き流してしまったが、あとで考えると、此日記帳の一件にも仲々意味があったのである。
話は元に戻る。それから暫くしてやっと裁判所の一行がやって来た。又専門家が来て、指紋を検べたりした。