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なにもの
何者
江戸川 乱歩
「時事新報 夕刊」時事新報社、1929(昭和4)年11月28日~12月29日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,449 字 · 77 页
赤井さんが覗いていたのは、外のものではない、常爺やだったとは考えられないかね」
「アア、そうか」
そこへ気がつかぬとは、私は何というボンヤリ者であったろう。
「爺やは、花壇いじりをしていたんだね。だがあすこには今花なんてないし、種を蒔く時節でもない。花壇いじりじゃ変じゃないか。もっと別のことをしていたと考える方が自然だ」
「別のことと云うと?」
「考えて見給え。あの晩爺やは書斎の中の不自然な場所に暫く坐っていた。その翌早朝花壇いじりだ。この二つを結び合せると、そこから出て来る結論はたった一つしかない。ね、そうだろう。爺やは何か品物を隠したのだ。
何を隠したか、何ぜ隠したか、それは分らない。併し、常爺やが何かを隠さなければならなかったということ丈けは、間違いがないと思う。窓際へ坐ったのは、その品物を膝の下に敷いて隠す為だったに違いない。それから、爺やが何か隠そうとすれば、台所から一番手近で一番自然な場所は、あの花壇だ。花壇いじりと見せかける便宜もあるんだからね。ところで君にお願いだが、これからすぐ僕の家へ行って、ソッとあの花壇を掘返して、その品物を持って来てくれないだろうか。