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なにもの
何者
江戸川 乱歩
「時事新報 夕刊」時事新報社、1929(昭和4)年11月28日~12月29日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,449 字 · 77 页
そこから妙な品物が出て来たのだ。それは古びた安物のアルミニューム製眼鏡サックで、最近埋めたものに相違なかった。私は常さんに感づかれぬ様、ソッとそのサックを一人の女中に見せて、持主を尋ねて見たところが、意外にもそれは常さん自身の老眼鏡のサックであることが分った。女中は目印があるから間違いはないと云った。
常さんは彼自身の持物を隠したのだ。妙なこともあるものだ。仮令それが犯罪現場に落ちていたにもせよ、常さん自身の持物なれば、何も花壇へ埋めたりしないで、黙って使用していればよいではないか。日常使用していたサックが突然なくなったらその方がよっぽど変ではあるまいか。
いくら考えても、分り相もないので、私はとも角もそれを病院へ持って行くことにして、女中には固く口留めをして置いて、母屋の方へ引返したが、その途中、又しても訳の分らぬ事にぶつかった。
その頃は殆ど日が暮れ切って、足元もおぼつかない程暗くなっていた。母屋の雨戸はすっかり締めてあったし、主人は不在なので、洋館の窓にも明りは見えぬ。その薄暗い庭を、一つの影法師がこちらへ歩いて来るのだ。
近づいたのを見るとシャツ一枚の赤井さんだ。