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なにもの

何者

江戸川 乱歩

「時事新報 夕刊」時事新報社、1929(昭和4)年11月28日~12月29日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,449 字 · 77 页

青空文庫

と、同時に、皆形が小さく、しかも充分目方があります。賊が盗み去ったと見せかけて、その実池へ投げ込むにはおあつらえ向きじゃありませんか。松村君、さっき君に花瓶を投げて貰ったのはね、あの花瓶が盗まれた置時計と同じ位の重さだと思ったので、どれ程遠くまで投げられるものかためして見たのだよ。つまり、池のどの辺に盗難品が沈んでいるかということをね」

「併し、犯人はなぜそんな手数のかかる真似をしなければならなかったのです。君は盗賊の仕業と見せかける為だと云われますが、それじゃ一体、何を盗賊の仕業と見せかけるのです。金製品の外に、盗まれた品でもあるのですか。全体何が犯人の真の目的だったとおっしゃるのですか」と、警部。

「分り切っているじゃありませんか。この僕を殺すのが、奴の目的だったのです」

「エ、あなたを殺す? それは一体誰です。何の理由によってです」

「マア、待って下さい。僕がなぜそんな風に考えるかと云いますとね、あの場合賊は僕に向って発砲する必要は少しもなかったのです。闇にまぎれて逃げてしまえば充分逃げられたのです。ピストル強盗だって、ピストルはおどかしに使うばかりで、滅多に発射するものではありません。