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よれいはつたび

余齢初旅

上村 松園

――中支遊記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,003 字 · 32 页

青空文庫

しかしそういう怪奇な家の表を通って来たのであったが、仏租界はそんなに危険ではないらしいという話であったので、毎日大抵租界のしきりを越えてゆくのであった。

私は自動車のちょうど真中あたりに座をしめていた。そして私の両側に同行の人がのっていた。もう一台の方は男の人たちが乗っていた。二台ずつで毎日市中をみて歩いていたのであった。翌日、自動車でゆくと、大へんな雑閙があり、そういうところに何ということであろう餓死人が倒れたまま放っておいてあるのだった。私はそれを何ということもなくとっくりとみていたかったが、歩いていると、それはただそれだけではなしに、実はそこにもここにもといったぐあいにあるのであって、誰も私のように物珍しくみているものなぞはないのである。通行人はそれを知らん顔をして通っているのである。日本ではそんな行き倒れなどがあると大騒ぎになるというところだが、この土地では誰も知らん顔をして通りすぎてゆくのであった。別に人だかりもしない、実に妙な悲惨なところである。

そうして蘇州へ行った時は、十一月中頃の寒い晩であった。そうすると上海中で昨夜の寒気で百人ほどの死人があったという。