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さっかとじだいいしき

作家と時代意識

宮本 百合子

「帝国大学新聞」1940(昭和15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,468 字 · 5 页

青空文庫

文学は脱世的なものであり得ないのだし、人生と歴史とにとって決して余技的なものではないのだから、青野氏の文章の前半は、現代日本の文学精神が、どこやらにまだ二葉亭四迷の時代の文化的業績評価の尾を引いているようで、今日に云われる一つの感想として、この自己否定、或は謙遜には、やはり私たちの心にのこされる何かの異議がある。

今日文学が作者の念願しているだけ十分にリアリスティックであり得ないという実際の事情は普遍的だから、誰しも身にひき添えて肯けるのであるけれども、それを理由にいきなりロマンティックな文学時代の招来へ飛躍されるのは、文学の問題としてみると、やはりくい下りの足りないという気がする。十分リアリスティックであり得ないという時代の性格そのものに対する作家の文学的意義のくい下りが足りないという気がする。

ロマンティシズムの精神において、では作家は縦横自在であり得るかといえば、現実にはその天地にも埒があって、ロマンティシズムの方向もほぼ見とおされる。現代にそのようなロマンティシズムへの傾きが何故生じていないかという文学の問いに、ロマンティシズムそのものは答えを与える力をもっていないということも興味がある。