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さっかにかたりかけることば
作家に語りかける言葉
宮本 百合子
『現代文学論』にふれて
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,928 字 · 16 页
報告文学。生産文学。何と夥しい呼び名がこの間に響いたことだろう。これらの声々は、ある点から見ればまことに悲痛な、今日の日本の文学における生ける人間の存在の消失に伴うつむじ風の唸りであり、作家と歴史とのめぐり合わせにおいてみれば「個人生活における一貫性」が砕けゆく過程の叫びであった。
『現代文学論』の第一篇、第三篇、第四篇、第五篇、第六篇は、次々に推移したそのような生活と文学との相貌を、具体的な個々の文学現象にふれて、文学的要因から闡明している。
時間の上からは第一篇についで書かれた第二篇は、それらの諸問題と必然なつながりをもっていると云うばかりでなく、この評論集全巻の核心をなす重要な部分ではあるまいかと考える。日本の文芸批評は、十年ほど前に鑑賞批評、印象批評から発展して、漸々社会的文学的にある客観的な意義をもった評価を試る段階にまで達した。その推進の役割を演じたものとしてプロレタリア文学の努力は、単にその文学のためのみならず日本の文学全体としての成育のために、いつの時代になっても無視することの出来ない意味をもっている。しかしながら、この文学作品評価の基準の問題は、夥しい論議と自身の未成熟のうちに端初的な数歩を踏みだしたばかりで、以来、文学原理の課題として正当な発展はさせられないでいた。