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さっかのせいかつ
作家の生活
横光 利一
1934(昭和9)年 4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,158 字 · 9 页
一作は次ぎの一作とは全く独立はしているとしても、作者の意識というものは左様に都合よく独立し得られるものだとは私には思えない。『春琴抄』における眼を突く時間の早さについてうんぬんしたのも、私にはここに意見があったのである。
ついでに宇野浩二氏の『子の来歴』についても一言生活としての例を挙げるとすると、この作も私は人々のいう如く感心をし、見上げた作品だと思ったが、しかし、この作品には、もっとも大切な親心のびくびくした感情というものは少しも出ていないように思われるのである。天界にはいったがためにびくつかないのなら、リアリズムの精神の深さというものは、いつでも天界へはいれる用意だけはしているものである。
宇野浩二氏は親心のびくつく大切な心理を圧えることに用心をされたのではなく、不恰好にそれをださないことに用心をされたのであって、作者と作中人物とがここまで素早く身を躱して、眼にもとまらぬ早さである。この早さが私には受けとり難い。もっとはるかにのろのろすべきところであるにもかかわらず、それをすり変えた巧みさは作者の意識の悠々たる落ちつきとは度を違えて周章ている。