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さっかのけいけん
作家の経験
宮本 百合子
「展望」1947(昭和22)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,801 字 · 25 页
この錯雑した諸事情がからみあって、どんな紛糾を生じたかは誰にもよく想像されるであろうと思う。社会主義リアリズムの問題はそのものとして、治安維持法の改悪からひきおこされたさけがたい恐慌は恐慌として、率直明白に別な二つの問題として取扱うところまで、当時のプロレタリア文学者たちは社会人として、理論的に成熟していなかった。悪法によって恐慌する人間の自然なこころを、そのまま主張するのが、階級的な文学の声であると知るところまで、文学的に成長もしていなかった。勇ましくあらねばならず、恐怖を知らないものであろうとした。そのために、こわい、いやだ、それはまちがっている、という声々を治安維持法に向って発せず、かえって、緊張した顔をわきに向け集めて、社会主義リアリズム論争、文学指導の政治的偏向という主題に熱中した。文学理論は、そのものとしてとりあげられず、すでに下ゆく水の流れの上におかれて論ぜられるのであったから、論議は理論的に進まず、論点の転換点はいつも心理的な動因に立っていた。しかも、誰一人(文学者であったのに!)その機微につき入る親切も、辛辣ささえももたなかった。