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かじつ
佳日
「改造 第二十六巻第一号」改造社、1944(昭和19)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,912 字 · 30 页
おじいさまは槍の、――」と言いかけて、自慢話になるのを避けるみたいに口ごもった。
「槍。」私は緊張した。私は人の富や名声に対しては嘗つて畏敬の念を抱いた事は無いが、どういうわけか武術の達人に対してだけは、非常に緊張するのである。自分が人一倍、非力の懦弱者であるせいかも知れない。私は小坂氏一族に対して、ひそかに尊敬をあらたにしたのである。油断はならぬ。調子に乗って馬鹿な事を言って、無礼者! などと呶鳴られてもつまらない。なにせ相手は槍の名人の子孫である。私は、めっきり口数を少くした。
「さ、どうぞ。おいしいものは、何もございませんが、どうぞ、お箸をおつけになって下さい。」小坂氏は、しきりにすすめる。「それ、お酌をせんかい。しっかり、ひとつ召し上って下さい。さ、どうぞ、しっかり。」しっかり飲め、と言うのである。男らしく、しっかりした態度で飲め、という叱咤の意味にも聞える。会津の国の方言なのかも知れないが、どうも私には気味わるく思われた。私は、しっかり飲んだ。どうも話題が無い。槍の名人の子孫に対して私は極度に用心し、かじかんでしまったのである。
「あのお写真は、」