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しゅんかん

俊寛

倉田 百三

「新小説」1919(大正8)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页

青空文庫

康頼 (森のほうより通ずる道を見る。いたく心を動かされたるさまにて)俊寛殿が帰って来られます。

成経 (顔を上げ、向こうを見る)何か考え込んでいられますね。

康頼 まるで蜻蛉のようにやせている。

成経 ひょろひょろして今にも倒れそうな足どりをしている。

康頼 あゝ、影のような力ない人間の姿だ。

成経 わしはまるで人間のような感じがしません。木の株が歩いているような。それとも石のきれか。

康頼 あゝ、立ち止まりました。岩にもたれてため息をついている。疲れたのでしょう。

成経 沖のほうを見ています。

康頼 いや、何も見ているのではありません。空虚な目つきをしています。

成経 あゝ墓石だ。ああしてじっとして動かないところはまるで墓石だ。

康頼 (身ぶるいする)あゝ。

俊寛 (登場。ため息をつきつつ、海を見入る)

成経 呼んでやりましょう。わしらにも気がつかないのだ。

康頼 (二、三歩あゆむ)俊寛殿。

俊寛 (じっとしている)

成経 (声高く)俊寛殿。

俊寛 (二人のそばに近づく)わしに力を与えてください。わしをはげましてください。わしは絶えいりそうです。

成経 (俊寛を抱く)今希望を失う時ではありません。