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しゅんかん

俊寛

倉田 百三

「新小説」1919(大正8)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页

青空文庫

俊寛 あの時成親殿は八幡の甲良大明神に百人の僧をこもらせて、大般若を七夜の間行じさせました。その時宮の前の櫺の木に、男山のほうから山鳩が三羽飛んできて怪しい声で鳴きつつ食らい合いをはじめました。それがいかにもしつこく、憎み合っているように、長い長い間。ついに三羽ともたおれて死んでしまうまで。わしはその時恐ろしくなって、これはきっと凶兆だからと言って彼をとめました。しかし彼はききいれなかった。しかしあの青二才の宗盛が多くの位を飛び越えて、ついに左大将になった時に彼の怨恨は絶頂に達しました。彼は上賀茂の神社の後ろの森の中に呪詛の壇を築いて、百夜の間幾爾の密法を行じました。宗盛を呪い殺すために。夜陰の森中に、鬼火の燃える鼎の中に熱湯をたぎらせて、宗盛に似せてつくった藁人形を煮ました。悪僧らはあらゆる悪鬼の名を呼んで、咒文を唱えつつ鼎のまわりをまわりました。まるで夢中で、つかれたもののように、しつこくしつこく繰り返して。

成経 父はむろんその場にいなかったのでしょうね。ただ命じてやらせたのでしょうね。

俊寛 いや。成親殿は夜陰にまぎれて毎夜賀茂の森まで通いました。