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しゅんかん

俊寛

倉田 百三

「新小説」1919(大正8)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页

青空文庫

基康 この赦文には俊寛という名は記してない。

俊寛 (青ざめる)そんなはずはありません。

基康 自分で見るがよかろう。(赦文を康頼に渡す)

俊寛 康頼殿。早く見てください。

康頼 (黙読し、成経に渡す)

俊寛 成経殿。わしの名は?

成経 (黙読し、俊寛に渡す)

俊寛 (ふるえる手にて受け取り読む。まっさおになる)礼紙を見てくれ。礼紙を!

基康 (無言にて家来に礼紙を渡す)

俊寛 (家来より礼紙を受け取り、裏を返し、表を返して見る)執筆の誤りだ。基康殿。あなたは都を出発する時三人を連れ帰るようにとの命令を受けられたに相違ない。

基康 わしの役目はこの赦文に記されたとおりを行使するのにある。

俊寛 もし執筆の誤りだったら。

基康 (冷ややかに)あなたを残して帰っても、責めはわしにはかかるまい。

俊寛 (せき込む)しかし清盛殿の意志が三人を都へ呼び戻すにあるとしたら。主人の意志を果たすがほんとうの忠実なる使者でしょう。あなたは主人の意志を熟知していられましょう。

基康 (皮肉に)わしがそんな高い身分のある者だったら、こんな役目はおおせつからなかっただろう。主人の意志を知ることなどわしなどには思いもよらぬことだ。