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しゅんかん

俊寛

倉田 百三

「新小説」1919(大正8)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页

青空文庫

基康 わしの前で内輪の争いは、見るに堪えぬわい。申の刻までに考えを決められい。猶予はなりませぬぞ。(退場。家来つづく)

成経 (基康の去るやいなや、飢えたるもののごとく手紙の封を切りて読み入る)

康頼 (手紙を読みかけて、俊寛を見てやめる)

成経 (かたわらに人なきがごとく)なつかしい母上よ、あなたの恩愛が身にしみまする。(今ひとつの手紙を読む)妻よ、お前の苦しみは察するにあまりある。どんなに会いたかったろう。(他の手紙を見る)乳母の六条の手紙に添えて、わしの小さな娘の手紙も入れてある。何という可憐な筆つきだろう。六条よ、あゝおまえの忠義は倍にして報いられますぞ。(手紙を読みつづける)

俊寛 (堪えかねたるごとく)わしの前でその手紙を読むのはよしてください。わしは不安で不安でたまらない。成経殿、あなたは考えを変えてはなりませぬぞ。きょうあなたが弓矢にかけてたてた誓いを忘れてくださるな。

成経 (われに帰りたるごとく)わしはあまりに苦しい、今はわしの一生の運命の定まる時だ。わしに考えさせてください。

俊寛 あなたは名誉ある武士のすえだ。あなたはいつもそれを誇っていられた。