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しゅんかん
俊寛
倉田 百三
「新小説」1919(大正8)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页
私一人おともをいたしご奉公申し上げましたけれども、そのご不自由さは申すもおいとしいほどでございました。絶えず敵の追手を恐れ、ことに恥と侮りとを防ぐためにあの気高い奥方がどんなに心を苦しめられたか、あなたがこの島にご流罪になられたと聞いてから奥方のお嘆きははたの見る目も苦しいほどでございました。康頼殿、成経殿のご赦免があってあなたのみお残りなされたと聞かれてから、奥方の悲しみはもはや私の慰め申すにはあまりに深くなりました。そしてついに病の床におつきなされ種々手をつくしてご看病申し上げましたけれどもそのかいなくついにお果てなされました。
俊寛 あゝあわれな妻よ。(目を閉じる。力なく)二人の子供は!
有王 そのあとを申し上げるのはあまりに苦しゅうございます。
俊寛 言ってくれ。言ってくれ。わしの心はもはや悲しみにしびれている。
有王 若君は夜も昼も父母をお慕いなされ、「母上はいずくにゆかれた! 鬼界が島とやらへ連れてゆけ。」とおむずかり遊ばしましたが、六年前の二月ごろその時はやった痘という病気におかかりなされついにお失せなされました。
俊寛 (石のごとく硬く冷たき表情にて)ただ一人残った娘は?