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しゅんかん

俊寛

倉田 百三

「新小説」1919(大正8)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页

青空文庫

有王 無間地獄の苛責とても今のあなたの苦しみにまさりはいたしますまい。

俊寛 この苦しみを倍にして、七倍にしてきっとお前に報いるぞ! わしの足がまだわしの体を支える限りは。えゝ。船を出せ。船を!

有王 (力つきたるごとく、ぐったりとして)船はとても得られませぬが。

俊寛 たとえ生きながら龍となって大海を越ゆるとも! (衣を裂く)わしは憎む。わしは憎む。(狂うごとく)えゝ、この頭が張り裂けるわい! (ほとんど無意識に頭を岩かどに打ち当てんとす)

有王 (まっさおになり、俊寛を抱き止める)ご主人様。ご主人様。

俊寛 (有王の腕の中にて)清盛よ。わしの死骸をお前の死骸に重ねるぞ! (失神して倒れる)

有王 (俊寛を抱きかかえたるまま)ご主人様、お気をおたしかに! あゝ、いたわしや。あまりに苦しみがすぎました。鬼神もおあわれみくだされい。かかる苦しみが歴史の記録にもありましょうか。

俊寛 (われに返り、抱かれたるまま、無限の感情をこめて)あゝ、有王よ。

有王 ご主人様。気をおたしかに! 有王は最後まで宮仕えいたしますぞ。海をくぐり、山によじても食物をあさり求めあなたを養い守りますぞ。