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しゅんかん

俊寛

倉田 百三

「新小説」1919(大正8)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页

青空文庫

わしは恨みそのものだ。わしは生きながらの怨霊だ。(耳をそばだてる)あゝ風の音か。わしの子どもが泣いているような気がしたのだが。

有王 (登場、魚と荒布とを持っている)ただいま帰りました。

俊寛 (なお何者かのあとを追うごとく)あゝ帰ったか。

有王 ご気分はいかがでございます。(俊寛のそばによる)

俊寛 わしの根はますますはっきりするばかりだ、わしの身体は日に日に衰えてゆくのだが。

有王 (つくづくと俊寛を見る)ご主人様、なにとぞ私の申すことをお聞きください。今夜は心を静めて何か召し上がりませ。ここに魚と荒布とがございます。

俊寛 わしはもはや飲食はたったのだ。わしははやく死にたい。

有王 なぜそのようなことをおっしゃいますか、私が生きている限りはたとえご不自由とは申せ、海山をあさってもあなたを飢えさせはいたしませぬ。

俊寛 あゝわしは生きていてどうするのだ。わしの手足にまだ力が残っていた間は、いかにもして一度都に帰って敵に一太刀報いる望みがあった。お前からあの恐ろしい凶報を聞いた時、わしがすぐに死ななかったのはただその希望のためのみであった。があまりに激しい悲しみはわしを打った。