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ぞくしゅう

俗臭

織田 作之助

「海風 第五巻六号」海風社、1939(昭和14)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,630 字 · 70 页

青空文庫

が、真相をいうと、見合の時に、新郎たるべき人が、千満子に就てはなはだ滑稽な印象を感じたのが原因だ。

見合は、千満子のお琴の会という名目で行われた。会場の北陽演舞場で振袖姿の千満子が師匠と連奏するのを、新郎たるべき人が鑑賞したのである。彼は、師匠の悠然たる態度に比べて、千満子が終始醜いまでに緊張し赧面しているのを見て、自分が赧面している様な錯覚を感じた。総てこのことが原因である。彼はその後、ルンバ踊りの名手といわれたあるレヴューガールと結婚したということである。

余談であるが、このお琴の会で政江が費った金は少く見積って三千円と噂された。政江母娘の衣裳だけでも千五百円出入りの呉服屋に支払ったと、義妹たちは口喧しかった。この呉服屋は児子家へ出入するだけで、娘を女学校へ通わせている。政江には四人の娘があり、最近彼女たちの正月の晴着を収めてたんまりもうけた呉服屋は、この正月には一家総出で白浜温泉へ出掛けようと思っている。児子家では、この正月から年始の客に酒肴を出しても良いということになった。S銀行上本町支店から児子権右衛門預金元利決算報告書が来て、権右衛門の預金が百万円に達したことが分ったからである。