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しゅぜんじものがたり
修禅寺物語
岡本 綺堂
――明治座五月興行――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,453 字 · 3 页
そんな訳ですから、全部架空の事実で、頼家の仮面……ただそれだけが捉え所で、他には何の根拠もないのです。この仮面一個が中心となって、芸術本位の親父や、虚栄心に富んだ近代式の娘などが作り出される事になったので……狂言の種を明せばそれだけです。頼家の最期は故と蔭にしました。
仮面の事は私もよく知りませんが、藤原時代から鎌倉時代にかけて、十人の名人があって、世にこれを十作と唱えます。夜叉というのはその一人で、実は越前大野郡の住人ですが、夜叉という名が面白いのでちょっとここへ借用しました。この夜叉王は徹頭徹尾芸術本位の人で、頼家が亡びても驚かず、娘が死んでも悲まず、悠然として娘の断末魔の顔を写生するというのが仕所で、最初から左団次を狙って書いたのですから多分巧く演ってくれるだろうと思います。
姉娘を演る優のないには困りました。源之助で不可、門之助で不可、何分にも適当の優が見当らないので、結局寿美蔵に廻りましたが、本来は宗之助か秀調という所でしょう。寿美蔵は飛だ加役を引受けて気の毒です。(五月五日)