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しゅぜんじものがたり
修禅寺物語
岡本 綺堂
「文芸倶楽部」1911(明治44)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,737 字 · 26 页
頼家 人やまいりし。心をつけよ。
(金窪兵衛尉行親、三十余歳。烏帽子、直垂、籠手、臑当にて出づ。)
行親 上、これに御座遊ばされましたか。
頼家 誰じゃ。
(桂は燈籠をかざす。頼家透しみる。)
行親 金窪行親でござりまする。
頼家 おお、兵衛か。鎌倉表より何としてまいった。
行親 北条殿のおん使いに……。
頼家 なに、北条殿の使い……。さてはこの頼家を討とうがためな。
行親 これは存じも寄らぬこと。御機嫌伺いとして行親参上、ほかに仔細もござりませぬ。
頼家 言うな、兵衛。物の具に身をかためて夜中の参入は、察するところ、北条の密意をうけて予を不意撃ちにする巧みであろうが……。
行親 天下ようやく定まりしとは申せども、平家の残党ほろび殲さず。かつは函根より西の山路に、盗賊ども徘徊する由きこえましたれば、路次の用心としてかようにいかめしゅう扮装ち申した。上に対したてまつりて、不意撃ちの狼藉なんど、いかで、いかで……。
頼家 たといいかように陳ずるとも、憎き北条の使いなんどに対面無用じゃ。使いの口上聞くにおよばぬ。帰れ、かえれ。
(行親は騒がず。しずかに桂をみかえる。)
行親 これにある女性は……。