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しゅぜんじものがたり
修禅寺物語
岡本 綺堂
「文芸倶楽部」1911(明治44)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,737 字 · 26 页
(春彦は出てゆく。楓は門にたちて見送る。修禅寺の僧一人、燈籠を持ちて先に立ち、つづいて源の頼家卿、二十三歳。あとより下田五郎景安、十七八歳、頼家の太刀をささげて出づ。)
僧 これ、これ、将軍家のおしのびじゃ。粗相があってはなりませぬぞ。
(楓ははッと平伏す。頼家主従すすみ入れば、夜叉王も出で迎える。)
夜叉王 思いもよらぬお成りとて、なんの設けもござりませぬが、まずあれへお通りくださりませ。
(頼家は縁に腰をかける。)
夜叉王 して、御用の趣は。
頼家 問わずとも大方は察しておろう。わが面体を後のかたみに残さんと、さきにその方を召し出し、頼家に似せたる面を作れと、絵姿までも遣わしておいたるに、日を経るも出来せず、幾たびか延引を申し立てて、今まで打ち過ぎしは何たることじゃ。
五郎 多寡が面一つの細工、いかに丹精を凝らすとも、百日とは費すまい。お細工仰せつけられしは当春の初め、その後すでに半年をも過ぎたるに、いまだ献上いたさぬとはあまりの懈怠、もはや猶予は相成らぬと、上様の御機嫌さんざんじゃぞ。
頼家 予は生まれついての性急じゃ。いつまで待てど暮せど埒あかず、あまりに歯痒う覚ゆるまま、この上は使いなど遣わすこと無用と、予がじきじきに催促にまいった。