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しゅぜんじものがたり

修禅寺物語

岡本 綺堂

「文芸倶楽部」1911(明治44)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,737 字 · 26 页

青空文庫

ただしその時は半月の後か、一月の後か、あるいは一年二年の後か。われながら確とはわかりませぬ。

僧 これ、これ、夜叉王どの。上様は御自身も仰せらるるごとく、至って御性急でおわします。三島の社の放し鰻を見るように、ぬらりくらりと取止めのないことばかり申し上げていたら、御疳癖がいよいよ募ろうほどに、こなたも職人冥利、いつのころまでと日を限って、しかと御返事を申すがよかろうぞ。

夜叉王 じゃと言うて、出来ぬものはのう。

僧 なんの、こなたの腕で出来ぬことがあろう。面作師も多くあるなかで、伊豆の夜叉王といえば、京鎌倉までも聞えた者じゃに……。

夜叉王 さあ、それゆえに出来ぬと言うのじゃ。わしも伊豆の夜叉王と言えば、人にも少しは知られたもの。たといお咎め受きょうとも、己が心に染まぬ細工を、世に残すのはいかにも無念じゃ。

頼家 なに、無念じゃと……。さらばいかなる祟りを受きょうとも、早急には出来ぬというか。

夜叉王 恐れながら早急には……。

頼家 むむ、おのれ覚悟せい。

(癇癖募りし頼家は、五郎のささげたる太刀を引っ取って、あわや抜かんとす。奥より桂、走り出づ。)

かつら まあ、まあ、お待ちくださりませ。