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はいゆうとげんだいじんのせいかつ(たいわご)

俳優と現代人の生活(対話Ⅴ)

岸田 国士

「悲劇喜劇 第四巻第四号(四・五月号)」1950(昭和25)年5月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,338 字 · 15 页

青空文庫

日本でも過去の時代にはそういう文化があつた。頓狂な声とか、金切り声とかさびのある声とかそういう事が言われたのは、声に対する審美的道徳的批判があつた証拠ですからね。それが現在は、人間の声なんかなんの批判の対象にもなつていない。毎日、いろんなスピーカーから叫ばれている声は、およそ末世的な、荒みきつた、野蛮な声の見本です。だから舞台の上で人間的に魅力のある美しい肉声というものが稀にしかきかれなくなつた。非常に薄つぺらな無教養を露骨に示した、荒れた声が多いですね。俳優養成所でもせめて、そういう「声の審美学」ぐらいはやつてほしい。が、それは、観念的に一応頭に入れることができるだけで、声の実質は研究所だけではどうにもならないでしよう。

A お話を伺つているとだんだん悲観的になつてしまう。

岸田 ともかく、そういうことに気がつかなければいけませんね。気がつけば何か切抜ける方法を考えるが、気がつかない事がむしろ僕は悲しむべき傾向だと思うね。だから、芝居をみても、将来を考えると、暗憺たる気持になる場合が多い。このまゝではなんとしても困る。自然に時代が解決してくれるとは思えない要素が多すぎる。