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はいゆうりんり
俳優倫理
岸田 国士
「演劇映画研究所での講義」1940(昭和15)年4月23日開始
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,412 字 · 104 页
この河原というのは当時の都市に於る唯一の広場です。そこで、おそらく、他の都市に於ても、この種の興行物は河原を選んで行われたろうと想像されます。ともかく、この歌舞伎の小屋が河原にたてられ、俳優はこの小屋で起居したというところから、一定の住居もなく、芸と媚を売って諸国を転々とする男女、即ち「河原者」という名がつけられたのです。
近代の演劇史を通じてみて、俳優の社会的地位の低かったことは争えない事実ですが、そこから、世間の軽蔑も生れているのです。「河原者」などという名はもとはそういう所から起ったのでありますが、しかし、歌舞伎が非常に発達し、劇場としての経済的基礎も出来、演劇そのものが社会の上層まで趣味として入り込んだそういう時代でも、やはり芝居小屋は所謂「悪所」のひとつと見做され、芝居をする人間即ち俳優を、世間は蔭で「河原者」とよんで、何か素性のいやしい人間のように見ていたということは、これはそもそも何に原因するのでしょうか。
封建時代のそういう考え方は、どうして次第に改められなかったか。その原因はやはり俳優自身の社会的存在がまだ十分一般に認められない、つまり社会的地位が十分に出来なかったということに帰する。