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はいくはかくかいしかくあじわう

俳句はかく解しかく味う

高浜 虚子

「俳句は斯く解し斯く味ふ」新潮社、1918(大正7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,016 字 · 144 页

青空文庫

前にもいった如く、実際等持院で作ったのであるから置いたといえばそれまでだが、それはこの句のみならず、どの句にでもそれぞれ作った場所がある。しかるに他の句には前置がなく、この句には前置のあるのはどういうわけであるか。その他の句の如きは、作った場所を指定していなくても、その句の趣味を解する上に格別の相違がない、しかるにこの句の如きは、些くとも「寺」という事が明かでなけりゃ何故「草の戸ごしの麦畑」といったかがわからぬ。前の解釈中にもいった如く、「他の在家即ち百姓などでは、新年の事であるから、門松〆飾などで飾り立てられた中に、寺であるから何もない」という意味が、前置によって聯想さるればこそ、「草の戸ごしの麦畑」という淋しい鄙びた、元日らしからぬ景色が生きて来るのである。総て前置というものは、かくの如く置かねばならぬ必要ある場合に限りて置くべきものであって、必要のないのにむやみに置くべきものではない。

雛店に彷彿として毬かな    召波

雛店というのは、説明をするまでもなく、節句前に雛人形を売っている店。新暦の三月三日はまだ薄寒いが、旧暦の三月三日は、いわゆる桃の節句で、桜も咲けば、桃も咲き、蝶も飛び蜂も飛ぶ、一年中の最も長閑な季節である。