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ぼくはこれからだ
僕はこれからだ
小川 未明
「新児童文化 第3冊」1941(昭和16)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,555 字 · 17 页
「ちっとも風がないな、一雨くるといいのだが、毎日降りそうになるけれど降らない。」と、ひとりごとのように、伯父さんは、いいました。
木々の葉が、てらてらとして、太陽の熱と光のためにしおれかけて、力なく垂れているのが見られました。そして、せみの声が、耳にやきつくようにひびいてきました。
「あの、高い、白い家が病院だ。」と、伯父さんは、彼方の森の間に見える大きな建物を指しました。
二人は、いつかその病院の病室へ案内されたのでした。准尉は、白い衣物のそでに赤十字の印のついたのを被て、足を繃帯していました。その二階から、ガラス窓をとおして、下の方にはるかの町々までが、さながら波濤のつづくごとくながめられました。伯父さんと、兵隊さんと話している間に、日の光が陰って、空は雲ったのでした。たちまち起こる風が、窓の際にあったあおぎりの枝を襲うと葉はおびえたつように身ぶるいしました。
「たいへんに暗くなった、なんだか夕立がきそうですね。」と、准尉が、いいました。
伯父さんは、だまって、目を遠くの地平線へ馳せていました。そのほうには乱れた黒雲がものすごく垂れさがって、町々が、その雲のすそに包まれようとしていました。