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そう

僧

小川 未明

「新小説」1910(明治43)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,206 字 · 21 页

青空文庫

そればかりでなく、身形も余り変っていると思った者がない。或時は、秋から冬にかけて、僧はこの村に入って来た。或時は、春の初めに入って来た。その来る時は定っていなかった。

然るに、或年のこと村に斯様噂が立った。

「あの僧侶は年を取らない。あの坊さんが来ると、きっとこの村で一人ずつ死ぬ。誰か死ぬ時に、あの坊さんが来る。」……

誰も、この噂を信じたものがなかった。

春の初め、何処からともなくこの僧が村に入って来た。その時、再びこの噂が持上った。この噂からして、村の或者は、来るたびに僧に銭をやったものがある。或者は、僧が来ると戸を閉めて留守を装っていた。十日許すると僧は、何処にかこの村を去ってしまった。

村の者は言い合った。

「坊さんは来なくなった。昨日も来なかった。一昨日も来なかった。」

「ちょうど今日で五日来ない。」

この時分から、始めて僧の来たり、去ったりするのが村人の注意に上った。

僧が去ってから、十日経たぬうちに村に事件が起った。村端に住んでいた年若い男の狂人と母親の二人が同時に死んだことだ。この二人はその筋から僅かばかりの給助を得て日を送って来た。村の人々もこの母親を憫んで物品を恵んだ。