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げんろくじゅうさんねん

元禄十三年

林 不忘

在线阅读林 不忘《元禄十三年(げんろくじゅうさんねん)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,586 字 · 42 页

青空文庫

」

辰馬は、頬被りの奥から、

「ほかに、心得は?」

「当日は、必ず大紋烏帽子のこと――。」

「その他――気が急く。」

垣根を離れて、行こうとするので、

「それから勅使院使さまがお上りのとき、吉良とお取持役おふたりが、お出迎えなされます。」

「うむ。それで?」

「その節、吉良は、高家筆頭の格式でお掛縁とやらまで出ますそうでございますが、兄上さまと立花様は、本座に――。」

「本座――ではわからぬ。どこだ、本座と申すのは。」

「何でも、おひき出しと申す場所だと――。」

「よし。お抽斗だな。」

去りかけた辰馬が、引っかえしてきて、

「扇は、は、ははははは、まだであろうな。」

「はい。まだでございます。でも、もうすぐ――危のうございますので、変り骨だけでは心細いと、あとから、いま一つ、難題を加えてやりました。吉良の知行、下野の稲葉の里に、親抱きの松というのがございまして、常から吉良が自慢にいたしております。いつぞや順礼がその松の下で相果てましたので、土地の者が、葬いのしるしに、それなる老木の傍に若松を一本植えましたところが、小松が枝を伸ばして、親松の幹を押さえましたそうで――さながら枝で支えようとしております恰好から、吉良が命名けまして親抱きの松と呼んでおります。