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きょうだい

兄妹

岡本 かの子

「令女界」1936(昭和11)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,011 字 · 4 页

青空文庫

正午、日はうらうらと桃花畑に照り渡り、烟り拡がっているのであった。兄は妹と長い堤を歩いて居た。

向うから、目鼻立ちのよく整い切った色白の村娘が来た。乙女はうやうやしく兄妹に頭を下げて恥ずかしそうに行き過ぎた。メリンスの帯が桃の花と対照してその娘を一そう可憐に美しく見せた。

――あれだろう、君のお付きになるのは。

――ええ、あれ、どう?

――いい娘ってんだろうなあ。

好い娘過ぎて「お米」は村で使い手が無かった。家の娘より美しい娘は負け惜しみの強い都会近在のこの土地では使い方がなかった。兄妹の母親はそれを選んで女学校卒業期に近い妹のため「お米」をおつきにすることにした。「お米」は近郷一の高位の令嬢のお付きになる光栄の日を待っているのであった。それが偶然途中で逢って口も利けない程恥ずかしくうれしかった。

――あのね、兄様、お母さんがね、お米は美しいけど……

――なにさ。

――お前には、ずっとお米より「くらい」が見えるんだから、ひけめをかんじてはいけないよって……

――ああ、そうだとも君。

兄は内気ながら凜とした処のある妹のあまり整っていなくとも、眼と額の際だって美しい妹の顔を振り返った。