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ぜんたいしゅぎへのぎんみ
全体主義への吟味
宮本 百合子
今日の民衆、知識人への課題
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,705 字 · 14 页
小林秀雄氏などが、民衆は批判性をもたないものであるし、又そんなものを必要ともしていないと主張して、民衆の知性と文学における現実の批判性を抹殺しようとしたのは周知のことである。
文化反動が、大衆・民衆の心持への結合というジェスチュアをもって強力に行われているのが、今日の重大な社会的特色であると思う。
大衆といい、民衆といい、昨今は国民といい、極めて粗笨な全体主義でおおうたもののいいかたをし、而もその全体の水準を生活全面で最低まで押し下げておいて、全体という言葉の逆用によって、大衆とその一部としての知識人の進歩性を窒息させているのが現実のありようなのである。
大衆課税、物価騰貴が大衆の双肩にかかっている。大衆の文化を圧する方策が、大衆の現実という名において大衆の頭上にふりかかって来ている。従って、大衆にわかる小説を書かなければならないという一見自明な『文学界』などの提案も、嘗てプロレタリア文学運動が、文学の大衆性と通俗性との相違を明らかにしようとして、作品行動の上でも努力した、その正当な努力の方向に沿うて再吟味することなしには、こういう外面の大衆への関心の底に横わっている顕著な反動の本質が、指摘されない危険があるのである。