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はっけんでんだんよ
八犬伝談余
内田 魯庵
「南総里見八犬伝 下」日本名著全集刊行会、1928(昭和3)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,945 字 · 43 页
芳流閣の屋根から信乃と現八とが組打して小舟の中に転がり落ち、はずみに舫綱が切れて行徳へ流れるというについて、滸我即ち古賀からは行徳へ流れて来ないという説がある。利根の一本筋だから引汐なら行徳へ流れないとも限らないが、古賀から行徳まではかなりな距離があって水路が彎曲している。その上に中途の関宿には関所が設けられて船舶の出入に厳重であったから、大抵な流れ舟はここで抑留される。さもなくとも、川は曲りくねって蘆荻が密生しているから小さな舟は途中で引っ掛ってしまう。到底無事に行徳まで流れて来そうもない。
夷の館山(素藤の居城)というは今も同じ地名の布施村や国府台に近接する立山であろう。稲村まではかなりの里程があって、『八犬伝』でも一泊二日路であるが、妙椿が浜路を誘拐するに幻術で雲にでも乗って来たら宜さそうなもんだのに、小脇に引っ抱えてズルんかズルんか引き摺って来て南弥六に邪魔をされ折角誘拐して来た浜路を伏姫神霊に取り返される。素藤が初め捕われて再挙を謀る間潜伏した山というはどの辺を指すのか解らぬが、夷隅は海岸を除いては全郡山地があるが山がすべて浅くて且つ低くて人跡未到というような感じのある処はなさそうだ。