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ろくがつ
六月
相馬 泰三
「早稲田文学」1913(大正2)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,673 字 · 37 页
そして手だの首筋だの、外へ出て人目に触れる部分には繃帯をしてもらったりした。
社へ行くと、下足番の爺さんが、彼の上草履を出しながらにやにや薄笑いして何か彼に言いそうにした。彼は何か言われないうちにと努めて不愛そうな顔つきをして急いで梯子段を上った。そこで外勤のF―何とかいった男に出会った。するとその男は、お互いについぞこれまで口を利いたこともないのだが、
「おや、曽根さん、おめでとう」と言って彼の肩を叩いた。
「いや」と、あいまいな返辞をして、振り払うようにして編輯の部屋へ入って行った。
誰かぱちぱちと手を拍いたものがあった。すると、今までペンを走らしていた人たちまでそのペンを措いて一斉に彼の方を見た。その人たちの顔が、いかにも、何か一口彼をからかってやらねばならぬと待ち構えていたかのように彼の目に映った。彼が席につくと、すぐ後ろにいた校正係りのT―老が朱筆をちょっと小耳に挾んで曽根の方へ向き、
「昨日の市内版へ、もう少しで君の記事が載るところだったよ。すんでのことでさ」
「新聞配達夫水に溺るってね」
三面の主任がこうつけ足して笑った。
外務主任がやって来た。