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ろくがつ

六月

相馬 泰三

「早稲田文学」1913(大正2)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,673 字 · 37 页

青空文庫

再び目が覚めた時は、闇がいくらか薄らいでいた。手足がいやに冷たく冷えていた。頭は、棒のようなものに撲られでもした後のように不健康な不愉快な響きで充ちていた。

彼の入れられていた部屋は、これはまた何という脅喝的な造り方の部屋であろう! 三方はコンクリートの壁で囲まれ、他の一方にはその面一ぱいに四寸角の柱を組んだ格子がはめられてある。入口はその格子の一部分で、そこに鉄製の潜戸があって、それには赤錆のした大きな鉄の錠が、いかにも厳かに、さもさも何か「重大事件」といったように重たく横たえられてある。天井の高さが不釣合いに高く、床のところが何かの底のように感ぜられる。

薄い、あるかなきかの明るみが右手の方から格子を通して左手の壁の上に漂うていた。彼はそのおぼつかない未明の光を打ちながめながら、咋夜来の自分の身を思うた。

いくら考えても考え直してみても記憶と記憶との間に一カ所大きな穴があって、そこのところがどうしても瞭然としない。それにしても川のあるところへなんかどうして行ったのだろう、川って一体何川なのだろう……

彼はもう一度、初めから順序を追うて昨夜の記憶を頭の中にくり返してみた。