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ろくがつ

六月

相馬 泰三

「早稲田文学」1913(大正2)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,673 字 · 37 页

青空文庫

そのうちにおきまりの三味線と唄と舞踊とが、何の感興もなく初まって何の感興もなく終った。それだのにそれが済むと、席は待ち構えていて拍手喝采した。それらがすべて馬鹿馬鹿しく見えてならなかった。自分の膳の中にはいつも盃が二ツ三ツあった。お酌してくれる者があるままに自分はぐいぐいあおっていた。しかしその間にも自分の目、自分の耳は数限りもない小さな細々した不愉快と忌々しさとを見聞した。例えば俗悪なる階級的気分、高慢、追従、暗闘、――それから事務員某の醜悪見るに堪えないかっぽれ踊り、それから、そうだ、間もなく誰かと何かしきりに罵り合ってあげくの果てが殴り合いとなり、皿類のこわれる音、……その争いがまたいろいろのこんたんを含んでいるので、外務主任のKが社に不平を持っていて策としてそんな幕を演じさせたのだとか……自分はもう大分酔っていた。自分の前後左右が無性と愚劣に見え出して来た。馬鹿馬鹿しいのを通り越して一切がただもう面倒くさくてしようがなかった。その時ふと目をあげると、自分の前に一人の雛妓が――初子とかいう名だった。――両手を膝の上へきちんと重ねて坐っていた。