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きょうさんとうこうはんをぼうちょうして
共産党公判を傍聴して
宮本 百合子
「働く婦人」日本プロレタリア文化連盟、1932(昭和7)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,846 字 · 10 页
何にもききません。右手に証人の控室というのがあって、そこに、さっき薄暗い控室にいたひともやがて来ました。○○○さんが私に「ちょっとあれが渡政のおかあさんよ」というのを見ると風邪でもひいているのでしょう、のどを白い布でまき、縞の着物を着た半白の五十越したおばさんが、蒼白いけれどそれは晴れやかな若々しい様子で隣の、これもなかなかしゃんとした小母さんと話しています。やや乱れかかった白髪と、確かり大きい口元や体のこなしに漂っている若々しさとの対照が、つよく私の眼にのこりました。
やがて巡査が入って来て、小さく切った紙を一枚ずつそこにいる人々にくばって歩きました。その紙に住所姓名職業年などを書くのだそうです。○○○さんが帯の間にはさんで持って来ていた鉛筆でそれぞれ書き込み、職業というところでゆきつまりました。失業中なのです、(何と書こうかしら)と云ったら○○○さんが「失業と書きなさいよ。貴女がわるいんじゃあるまいし」と云うので、失業と書きました。さっき紙をわけた巡査がその紙をうけとって書いてあることをよんでから、「一寸立って下さい」と云い、立つと袂をいじったり、帯をなでたりして軽く身体検査をやります。