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へいしとじょゆう

兵士と女優

渡辺 温

「探偵趣味」1928(昭和3)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,102 字 · 7 页

青空文庫

「はてね?」

「それでね、その癖、何のために戦争をするんだか、正義のためにとは云うんだけど、何が正義なんだかちっとも判らないし、第一敵が何処の国やら皆目見当がつかないんだから嫌になっちゃうんだよ」

「そいつは、愉快だね。僕だって、今度の戦争ならば全くそうに違いないと思ったぜ」

「そう。そう云えば、あんたから送って来た戦地のスナップショット、どれもこれも、とてもお天気がいいね。それに塹壕の中には柔かそうな草が生えているし、原っぱはまるで芝生のように平かだし、砲煙弾雨だって全く芝焼位しかないし、あたい兵隊が敵に鉄砲向けているところ、ちょっと見たら、中学生の昼寝じゃないかと思ったわ」

「敵の軍勢がいないんだよ」

「敵がいない戦争なんてあって?」

「本当は、兵隊どもは自分たちの敵を見つけることが出来ないのだとも云える。もっとも、たった一度、我軍のタンクを草むらの中から覗っている野砲があったので、一人の勇士がタンクを乗り捨てて手擲弾でその野砲を退治してみたところが、それもやっぱり敵ではなくて我々と同じようなヘルメットをかぶった味方の兵士だった。それでね、大騒ぎになって、いろいろ調べてみると、莫迦げた話じゃないか、それは何でもトルキスタンあたりの或る活動会社が金儲けのために仕組んだ芝居だったのだ」