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きかくとさんぞくととのさま

其角と山賊と殿様

山本 周五郎

「キング」大日本雄弁会講談社、1934(昭和9)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,948 字 · 10 页

青空文庫

上段には面を蔽った男が一人、七八人の女達に囲まれて傲然と構えているし、広間には髭、月代を伸ばした異装の男達が、これも女達に酌を執らせてい並んでいた。女達はいずれも誘拐されてきた者と見え、衣服も髪かたちも区々であったが、みんな眼を泣腫らして、ぶるぶる顫えている様子だった。

「これ、そこの裸の男」

其角が末席に座ると、上段にいる頭領らしい男が声をかけた。

「貴様は幸運な奴じゃな、今宵は儂の祖先の百回忌で、女三人、男五人を生贄に祭る日じゃ、貴様が男では五人め――最後の贄になるのじゃ、名誉であろうが」

其角は胴顫いの出るのを止めることができなかった。

と――その時、

「ひ――!」

と言う若い女の悲鳴が聞えてきた。すると上段にいる頭領は愉快気に、

「襖を明けろ、贄を肴に呑もうぞ」

「はっ」

手下の二人が立って、次の間の襖をさっと左右へ引明けた。其角はひと眼見るよりあっと叫んで眼をつむった。

次の間には大きな炉が切ってあって、火が烈々と燃えている、その火の上へ、天井から鉄の鎖で縛りあげられた半裸体の女が、逆さ吊りに吊り下ろされているのだ。

「ひ――!」

喉も裂けよと悲鳴をあげて、白い手足を蛇のようにのたうつ女。